通勤ライナーでの着席通勤普及は不可能!それよりも特別車両の導入を

近年になって、有料着席通勤列車の機運が高まり、大手私鉄で通勤ライナーが多く導入されるようになっています。例えば2018年のダイヤ改正では、京王電鉄の京王ライナー・西武鉄道の拝島ライナーが運行を始めました。

そもそも通勤ライナーとは主に平日ラッシュ時に運行される列車で、追加料金を必要とする代わりに座席指定制や定員制などによって着席保証がなされている列車です。

私は通勤ライナーでは着席通勤を充分に普及させることはできないと考えています。それよりは、JR東日本普通列車グリーン車のような一般車両に連結する形で特別車両の導入をすべきだと考えています。

通勤ライナーでの着席通勤普及は不可能

通勤ライナーでは着席通勤普及が不可能だと私が考える理由について説明します。

時間帯が限られ本数が少ない

通勤ライナーは過密ダイヤの中を走ることやライナー専用車両が限られていることなどから、一般の列車と比べて本数は少なくなってしまいます

例えば、京王ライナーは新宿から八王子・橋本方面それぞれに、20時から0時代まで1時間おきに1日5本しか運行されません。一方、追加料金不要の普通や特急は時間問わず10分に1本は運行されています。

京王ライナーの本数は一般列車に比べて少ない
時刻表|京王グループより
青の白抜き文字が京王ライナーで、一般列車と比べると少ない

比較的本数の多い京急のウィング号でも朝ラッシュ時は2本・夕ラッシュ時は19時以降20~30分に1本です。これも10分おきに運行されている追加料金不要の特急や快速と比べると少ないという印象です。

毎日通勤ライナーの時間に合わせて帰宅できる人は良いのですが、そうでない人は通勤ライナーに乗るために最大数十分も列車を待つ必要があります。それだったら、例え座れなくてもちょうど来た列車に乗って早く帰宅したほうが良いのではないかと私は思います。

ちなみに、通勤ライナーは本数だけでなく停車駅も少ないため、さらに利用できる人は限られてきます。

京急ウィング号は停車駅が少ない
画像引用:モーニング・ウィング号、ウィング号 | 京急の電車紹介 | 電車・駅・路線 | 【KEIKYU WEB】京急電鉄オフィシャルサイトより
京急ウィング号は長距離利用のみを想定し、横浜駅や川崎駅も通過してしまう

座席数が少ない

近年導入された通勤ライナー(京王ライナーやS-TRAIN・TJライナー)はロングシートとクロスシートを切替可能なマルチシート型タイプの車両を使っています。その車両の特徴として、日中は一般車両として使えるため、車両運用の効率が良いということがあります。

しかし、一般車両での運用も想定した結果、ドアやその付近のスペースを省くことができず、座席数は少なくなってしまいます。座席数が少ないと「満席で乗りたくても乗れない」という人が増える可能性が高まります(TJライナーは前日に満席になることもあるそうです)。

実際S-TRAINの1車両あたりの座席数は最大でも48席です。これは同じ西武鉄道の特急レッドアロー64席と比べても少ないです。

S-TRAINの座席数は少ない
画像引用:車内設備 :西武鉄道Webサイトより
ドアスペースのために座席数が少ない

増発は一般車両の混雑を招く

ここまで述べてきた利便性と座席数の問題を解決するためには、通勤ライナーの本数を増やすしかありません。そうすれば、通勤ライナーは多くの人にとって、より使いやすいものになるでしょう。

ここで忘れてはならないのは、通勤ライナー以外の一般車両の存在です。通勤ライナーが普及しても、依然として多くの乗客は一般車両を利用することになります。短距離利用者や経済的に余裕のない人が通勤ライナーを使うとは思えませんし、そもそもラッシュ時の大量の乗客を通勤ライナーだけで運ぶことは不可能です。

ラッシュ時の過密ダイヤの中で、通勤ライナーの本数を増やすことは一方で一般車両の本数を減らすことに繋がります。そして、通勤ライナーによって運べる乗客数は満員の一般車両には到底及ばないので、一般車両は更に混雑を増すことになります。

実際、通勤ライナーの本数が少ない現状でも、通勤ライナーの後続の特急・急行列車の混雑状況が悪化するといった一般車両への悪影響が生じています。

通勤ライナーでは着席通勤普及は難しい

ここまで述べてきたことから、通勤ライナー増発にはそれだけのダイヤの余裕が必要で、そのためにはホーム改良・複々線化といった抜本的な線路改良が必要になるといえます。しかし、費用や用地を考えるとそれらは難しく、小田急の複々線化事業のように完成には数十年を必要とする可能性が高いです。

そう考えると、通勤ライナーを利便性と座席数が満足できる水準まで増発することはとても難しいです。

通勤ライナーが現状の本数のまま運行され続けるとしたら、通勤ライナーは限られた一部の人のみの選択肢という現状は続くでしょう。逆に言えば、多くの人にとって通勤ライナーは遠い存在のままであり続けるということです。

例えば、京王の定期利用者は約30万人(鉄道統計年報[平成27年度])ですが、現在のダイヤの京王ライナーで運べるのは下り方面限定で最大でも2190人です(全列車が満席のとき)。それは定期利用者全体の0.73%に過ぎず、とても着席通勤が普及しているとは言えないです。

特別車両の導入を進めるべき

特別車両とは

ここでの特別車両とは、一般車両に連結する形で運行される車両で、追加料金が必要な代わりに、一般車両に比べて座席が快適で混雑時でも座れるといった特徴を持ちます(ただし、自由席タイプの特別車両は満席で座れないこともある)。

特別車両の代表例としては、JR東日本の東京近郊で広く運行されている普通列車グリーン車があります。その他には、名鉄特急の特別車京阪プレミアムカーなどがあります。

JR東日本普通列車グリーン車
画像引用:File:Saro E232-3005.JPG – Wikimedia Commonsより
関東で広く運行されるJR東日本普通列車グリーン車
名古屋鉄道の特別車
名古屋鉄道では主に特急列車に特別車が導入されている

通勤ライナーと比較したときの特別車両のメリット

通勤ライナーと比較すると、特別車両には以下のようなメリットがあると考えます。

利便性が高く、多くの人が利用可能

特別車両は一般車両に連結される形になるので、本数や停車駅は料金不要の一般車両と同じです。また、平日・ラッシュ時だけでなく、休日や日中も含めた全時間帯に運行されることになります。

えきから時刻表 駅時刻表より
上記の全ての列車にグリーン車が連結されています

したがって、通勤ライナーは利用できる人が限られていましたが、特別車両ならその路線のほぼ全ての人が利用の選択肢を持つことになります。

快適性が高く、座席数も多い

通勤ライナーは普通列車運用を見こしているために、座席数が少なく快適性が劣るのが欠点でした。
一方、特別車両は特別車としての運用だけを考えて作れるので、快適な座席を多く配置することができます。

例えば、JR東日本普通列車グリーン車の座席はテーブル付きのリクライニングシートです。この座席なら移動中にパソコン作業や食事もできますし、充分な休息を取ることも可能です。
また、2階建て車両を採用しており、1車両あたりの定員は90人と通勤ライナーの約2倍です

2階建て車両導入により車両定員を大幅に増やしたJR東日本普通列車グリーン車
2階建て車両導入により定員を大幅に増やした

このように座席数が多いことはラッシュ時の運送効率を上げ、一般車両の混雑緩和に繋がります。また、非混雑時は1人でリクライニングシートを2席使えるというさらなる快適性を乗客に提供しています。

着席通勤普及が可能

これらのことから、特別車両は利用を選択できる乗客が多く、通勤ライナーと比べても利用価値が高いことが分かります。よって、着席通勤や快適な移動が普及するためには特別車両導入がベストだと考えます。

実際、国土交通省によると普通列車グリーン車の導入されている路線(東海道線・総武本線など)では、着席通勤列車の利用率が2~3%となっています。京王ライナーは最大でも0.73%だったことを考えると、特別車両の方が着席通勤普及への可能性が高いと言えるのではないでしょうか。

特別車両のデメリットと対処法

通勤ライナー導入が普通列車の混雑を招くように、特別車両導入にもデメリットも生じます。しかし、それには対策や対処が可能だと考えています。

ラッシュ時以外の需要が少ない

特別車両はラッシュ時問わず運行されますが、比較的一般車両が空いている日中は需要が少ないことも予想されます。実際、特別車両の運行されているJR東日本や名古屋鉄道でも、ラッシュ時は高い乗車率ですが日中は結構空いているという状況です。

これについては、休日・日中は料金を値下げするなどして、混雑時以外でも快適な特別車両利用を促すことが考えられます。またコンセント設置など、一般車両とのさらなる差別化を図ることも需要増加に繋がるでしょう。

一般車両の混雑を招く

編成両数は同じままで一般車両を特別車両に置き換えることは、一般車両の混雑を悪化させることにつながります。

その対処法の一つとしては、編成中の特別車両の割合を小さくし、特別車両1両あたりの定員を増やすことです。例えば、列車は10両で一般列車には混雑時1車両あたり200人が乗車しているとします。その一般車両のうち1両をを2階建て定員100人の特別車に置き換えたとすれば、一般車両の混雑増加は6%弱に抑えられます。

1時間あたり15本走る路線で、その内3本を置き換えて通勤ライナー(1両あたり定員50人)を走らせれば、一般車両は約19%の混雑増加が予想されます。1時間あたり15本・1列車10両という同条件下で、特別車両が運べる乗客と通勤ライナーが運べる乗客の数は一緒だということを考えれば、特別車両による混雑増加は小さいと言えます。

もっと良い対処法としては、一般車両は減らさずに特別車両だけを増やすということです。この方法ならば、逆に一般車両の混雑を緩和させられます。しかし、この方法では車両全体の編成両数は増加するために、ホーム増設などの施設改良が必要になります。

この例として、JR東日本は中央快速線にグリーン車2両を増結するために各駅でホーム延伸作業を行っています。バリアフリー対応や耐震工事などとも合わせて総工費は500億円ですが、複々線化などにより新たにトンネルや高架を作ることと比べれば、 安価で比較的容易なことだと想像できます。

それでも着席通勤普及は難しい

通勤ライナー増発に比べて特別車両導入は一般車両への影響が少なく、多くの乗客に着席通勤の機会を与えることができます。しかし、それでも経済的余裕の少ない人や短距離利用者などを含めたより幅広い人々に着席通勤が普及するのは難しいと考えています。

着席通勤普及が大きく進むには値下げと座席数を更に増やすことが必要です。しかし、ダイヤが超過密で普通列車の混雑がかなり激しい現状で、これ以上座席数を増やすというのは不可能です。

やはりこれには同時間帯に同じ方向に大量の人が通勤・通学するという根本的問題の解決が必要です。そのためにも、鉄道会社の努力だけでなく企業の地方移転やリモートワーク・フレックスタイム制の導入・推進など企業や政府の努力も必要になってくると考えます。

ポクくんのまとめの一言

着席通勤の普及に向けて考えたことを私なりに書いてみました。私はまだ高校生ですし、ネット上で見たり聞いたりしたことを踏まえて書いた部分も多いので、私の意見には多くの間違い・欠点があると思います。よって、今後は実際の乗車等もすることでより幅広い視点を持って、着席通勤の普及についてより深く考えていきたいと思いました。