【AF対応】Z初のサードパーティ Viltrox 85mm F1.8 最速レビュー!

2021年2月16日

Nikon Zマウント初のAF対応サードパーティ製レンズ「Viltrox 85mm F1.8 STM」レビュー

先日、ViltroxからついにNikon Zマウント初のAF対応のサードパーティレンズ「Viltrox 85mm F1.8 STM」が日本国内でも発売されました。Nikon Zが登場してから、すでに2年以上、素晴らしい純正レンズがいくつも登場した一方で、まだまだ種類は少ない上に、全体的に値段も高いので、サードパーティレンズを待ち望んでいた方は多いと思います。

僕もサードパーティのレンズが来ないかと待っていた一人です。大学生なので、純正の高価なレンズにはなかなか手が出せませんでした。以前紹介したTTArtisan 11mm f/2.8 Fisheyeのように、電子接点なしのMF専用レンズならすでに登場していたのですが、AFが使えないとレンズを活かせる場面が限られてきます。

そんな中で登場したのが、この「Viltrox 85mm F1.8」というフルサイズ対応単焦点レンズです。Nikon Z初のAF対応サードパーティ製レンズということで、動作に不安はあったのですが、ちょうど85mmの単焦点レンズを欲しかったこともあり、すぐにポチってしまいました! そこで今回は、そのZ初のAF対応サードパーティレンズ「Viltrox 85mm F1.8」を実際に使ってみて、AFの動作やボディとの相性といった機能面をはじめとして、外装や写りなどに関しても詳しくレビューしていこうと思います。

僕が調べた中では、この記事が日本初レビューとなるかと思います。これから買う方の参考になれば幸いです!

【Nikon Z】Viltrox 85mm F1.8 のスペック

まず、Viltrox 85mm F1.8について、値段や外観などの基礎的な情報を書いていきます。

Viltrox 85mm F1.8 STM
マウントNikon Z
レンズ構成7群10枚
焦点距離85mm(単焦点)
絞りF1.8-F16
絞り羽根枚数9枚
最短撮影距離0.8m
最大撮影倍率0.125倍
重量540g(実測値)
サイズφ80mm x 92mm
フィルターサイズ72mm

ちなみに、Viltroxは中国の新興レンズメーカーです。すでにソニーEマウントや富士フイルムXマウントに、数多くのAF対応レンズを投入しており、どれも高い評価を得ています。今後さらに注目され、日本での知名度も高くなるのではないかと思います。

純正Z 85mm f/1.8 Sの半額で買える!

初めに、Viltrox 85mm F1.8の値段についてです。

今回、僕はViltroxのレンズを日本で代理販売しているPergearのオンラインサイトから、Viltrox 85mm F1.8を予約注文しました。クリスマスセールやクーポンを利用してですが、値段はなんと36000円! フルサイズ対応で、このスペックの単焦点レンズが、この安さで手に入るのは、かなり凄いと思います!

Viltrox 85mm F1.8をPergearから購入
これがサードパーティか!という安さです

残念ながら、この記事を書いている時点では値上げしてしまいましたが、それでもAmazon等から約5万円で購入可能です。ほぼ同スペックのNIkon純正 NIKKOR Z 85mm f/1.8 S が約10万円なので、純正の半額です!

サードパーティ製レンズが投入されると、安く買えるレンズの選択肢がぐっと増えるので非常にありがたいです!

高級感のある金属製のレンズ

次に、Viltrox 85mm F1.8の外観について紹介します。

Viltrox 85mm F1.8の外観
外装のレベルは非常に高く、かっこいい!!

このレンズの外観を見たときに特徴的なのは、大きな前玉に合わせるように作られた太い鏡筒でしょう。マウントが小さいソニーEマウントだと、このような形状のレンズをよく見ますが、マウントの大きなNIkon Zかつf1.8単焦点で、このような形状になるレンズは珍しいです。後述しますが、この前玉の大きさが、その写りの良さにも一役買っているように思います。

Viltrox 85mm F1.8の前玉
f1.4と言われてもおかしくないくらいに、前玉が大きい

サイズ感としては、純正の標準ズームレンズZ 24-70mm f/4Sの沈胴状態より、一回り大きいです。重さは540gなので、Z 24-70mm f/4 SやZ 85mm f/1.8 Sよりわずかに重いぐらい。85mm f1.8にしては、少し大きめ重めの部類に入るかと思いますが、余裕で持ち運びは可能です。

レンズは金属製で、塗装の質感も高く、高級感があります。10万円と言われてもおかしくないような値段以上の作りです。アクセントとなる赤いマークも含めて、デザインは非常に僕好みです。ただし、光沢の具合などがNikon純正のボディやレンズとは異なるので、ボディとのデザインの相性は純正には負けてしまうように感じます(Viltroxが決して合わないということはありませんが)。

Viltrox 85mm F1.8をNikon Z6に装着したときの図
Z6に装着したときのサイズ的なバランスはバッチリです
グリップした時、レンズに手が干渉することもありません

付属品としては、レンズキャップとリアキャップ、フードがありますが、フードの作りに難がありました。具体的には、レンズ本体との噛み合わせが悪く、取り外しはかなり苦労します。

Viltrox 85mm F1.8のフードを取り付けた状態
フードは逆さ付け可能ですが、脱着で詰まるような感じがします

販売店に問い合わせましたが、これが仕様みたいです。フードは付けっぱなし、あるいは完全に無しで運用するか、以下のような折りたたみ式のラバーフードを使うのがおすすめです。

USB経由でのアップデート対応

最近のサードパーティ製レンズあるあるですが、このViltrox 85mm F1.8はアップデートに対応しています。アップデートにより、AFや手ブレ補正などの動作が改善したり、今後登場するであろう新ボディに最適化したりします。

Viltrox 85mm F1.8のマウント部分
マウントの下側にUSB type-Bがある

Viltroxレンズのアップデートで嬉しいのが、TamronやSAMYANGのように別売りの機器を買う必要はなく、パソコンから直接、マウントにあるUSB Type-Bに接続してアップデートが可能です。アップデート用のデータは以下のページからダウンロードができます。

直接マウントに接続できるという良さはある一面、防水性は損なわれているように見えるので、雨天時の使用は要注意です!

レンズの発売直後はかなり頻繁に、アップデートを行っているようで、Viltrox 85mm F1.8も購入から2週間で2度アップデートを行いました。アップデートにより、実際に動作の改善を確認できているので、頻繁にこのダウンロードページはチェックして、常に最新版を保つようにしたいです。

【Nikon Z】Viltrox 85mm F1.8 最速レビュー

これまではViltrox 85mm F1.8のスペック面を中心に紹介してきました。ここからは、実際にこのレンズをを2週間ほど使ってみた上で、AFの速さや正確さ、手ブレ補正など、機能的な部分を中心に、どれくらいZマウント初のサードパーティレンズが使えるのかをレビューしていこうと思います。

AFは全く問題なし! 純正並みの動作

はじめに、Viltrox 85mm F1.8のオートフォーカスの動作についてです。

結論から言うと、AF-S、AF-CともにAFは純正並みの動作をします。Z 24-70 f/4 Sとの比較になりますが、フォーカスは迷わず、スピードは純正と変わらないし、絞り開放でもピントはバッチリ完璧です。瞳AFも正常に動作し、暗いところでも大丈夫です。

正直、はじめてのAF対応サードパーティレンズということで、AFはあまり期待していなかったのですが、良い意味で期待を裏切られました。ニコンはソニーEマウントと異なり、マウント情報を公開していないので、AFの制御はかなり難しく、かなりの研究(リバースエンジニアリング)が必要なのですが、さすがViltroxといった感じです。

サードパーティですが、AFを全く違和感なく使えるのが凄い!

MFはフォーカスバイワイヤで制御

Viltrox 85mm F1.8は純正Zレンズと同様に、物理的に直接ピントを調整するのではなく、ピントリングの回転量に感知して、電子的にフォーカスを移動させる方式になっています。マニュアルフォーカスを使う場合、非常に大きなピントリングに加えて、ゆっくり回せば、細かな調整ができるので、絞り開放でもピントを合わせやすいです。

AFの場合、ピントリングにはピント調節のほか、絞りや露出補正などの機能を割り当てることも可能です。

動画にはあまり向いていない

Viltrox 85mm F1.8ですが、機能的には全く問題なく動画撮影にも使うことができました。AFも静止画同様に問題なく作動しますし、ステッピングモーターなのでフォーカス音も静かです。

ただ、1つ気になったのは、ミラーレス用レンズにしては、フォーカスブリージングが大きいように思います。そのため、フォーカスの移動量が大きい場面だと、映像が不自然になってしまいます。その点、Nikon Zの純正レンズは非常に優れているので、本格的な動画撮影に使うなら純正一択かと思います。

手ブレ補正も純正並み

Viltrox 85mm F1.8ですが、手ブレ補正は内蔵されていません。しかし、Nikon Z5/Z6/Z7などのボディ内手ブレ補正機能があれば、それを利用することができます。

電子接点なしのレンズやFTZマウントアダプター経由でFマウントレンズを使う場合は、純正Zレンズに比べて手ブレ補正の効き目が弱くなる感じがありました。しかし、このViltrox 85mm F1.8はその傾向がありません。Z 24-70 f/4Sの望遠端70mmとの比較になるのですが、純正とほぼ同様の手ブレ補正効果があります。条件にもよりますが、1/5秒ぐらいまでなら手持ちで撮影可能です!

AFと同様に、良い意味で期待を裏切られました!

レンズ補正が適用されない

AFや手ブレ補正では純正と同様に問題なく使えたViltrox 85mm F1.8ですが、機能面で問題があるとすれば、ボディ内でレンズ補正が適用されないことだと思います。レンズの歪曲等を直すには、後から手作業で補正をかける必要があります。

このViltrox 85mm F1.8はレンズ補正前提の光学設計ではないにしろ、糸巻き型歪曲が見られます。ポートレートや風景等では目立つ歪曲ではありませんが、建物等を写すのであれば補正がないとやや不自然な絵となります。Rawで撮影して、後からLightroom等で補正するという場合には問題ありませんが、そうでない場合は使い所を選ぶことになります。

Lightroomで補正を行うときは、「Zeiss Batis 1.8/85」のプロファイルを選択すると、きれいに補正されます。自動でレンズ補正が適用される純正レンズと比べると、少し不便です。

最近のミラーレス一眼のレンズは、レンズ補正前提・補正必須で作られているものが多いです。しかし、Zマウントはマウント情報非公開なので、サードパーティ製レンズにレンズ補正を適用するのは難しいと言われています。この課題を解決できるか否かが、今後シグマやタムロンを含めた、他のサードパーティの参入の鍵となりそうです。

とろけるようなボケが美しい

最後に、このレンズの描写について、簡単に紹介します。

Viltrox 85mm F1.8の絞り開放の作例
ボケが美しい、ポートレートに使いたいレンズです

中望遠の単焦点レンズといえば、そのボケ味を求めて購入される方が多いのではないかと思うのですが、このViltrox 85mm F1.8はそのボケの美しさが特徴です。前ボケも後ボケも非常になめらかで、写真に大きな立体感が生まれます。このレンズを買う前は、絞って全体をシャープに撮影する事が多かったのですが、このレンズでは絞り開放を積極的に使いたくなりました。

Viltrox 85mm F1.8のボケ描写
前ボケも後ボケもなめらかできれい!
最短撮影距離0.8mで、寄れないところだけが残念
Viltrox 85mm F1.8のボケ感の作例
前ボケも後ボケも、まさにとろけるような感じです。
Viltrox 85mm F1.8の絞り開放の作例
適当に自転車を撮っただけですが、立体感が凄すぎる!
描写の特徴はAF-S NIKKOR 85mm f/1.8Gに似ている感じです
Viltrox 85mm F1.8の玉ボケの作例
f2.2まで少し絞った作例
玉ボケの口径食は普通程度な印象
Viltrox 85mm F1.8の光条と逆光耐性の作例
絞っても光条は控えめです
逆光耐性は中の上ぐらい

極限までガチガチに解像する純正85mmに比べれば、シャープネスは負けてしまいますが、心地良く解像するといった印象です。レンズが大きめな分、絞り開放でも写りに余裕があり、中央部分なら開放からきっちりと解像します。周辺もF2.2まで絞れば、かなり改善します。四隅まではっきりと解像させたい風景や建物写真なら純正に分がありますが、Viltroxのきれいなボケと程よくシャープな感じな描写は、ポートレート写真には特に最適です。

純正Zは解像感もボケも高いレベルで優等生的、悪く言えば面白みのないレンズです。Viltroxは対して、全体的に必要十分なレベルを持ちつつも、ボケの美しさに特化した個性のあるレンズです。

実は、このレンズと全く同じ光学系のレンズは、すでにいくつも登場しています。例えば、同じVILTROXの「VILTROX PFU RBMH 85mm F1.8 ST」や「VILTROX 85mm F1.8 II」、そして日本のレンズメーカーであるトキナーの「atx-m 85mm F1.8 FE」にも採用されています。

このページでは、レンズの描写については簡単な説明となってしまいましたが、詳しいレビュー、作例はそれらのレンズについて調べていただければ、たくさん紹介されています。気になる方は是非チェックしてみてください! この光学系の写りの良さがよく分かると思います。

【Nikon Z】Viltrox 85mm F1.8 まとめ

最後に、この記事で書いた内容を簡単に振り返っておきます。

Viltrox 85mm F1.8 NikonZ まとめ
  • Nikon Zマウント初のAF対応サードパーティレンズ
  • 約5万円で購入可能! 純正の半額
  • 外装は金属製で高級感あり。持ち運びも余裕の大きさ。
  • AF、手ブレ補正は全く問題なし!
  • レンズ補正が適用されないところだけが、機能上の欠点
  • ボケが非常に綺麗でポートレート向き

Nikon Zマウント初めてのAF対応サードパーティ製レンズかつ、値段は純正85mmの半額ということで、正直買う前は不安があったのですが、良い意味で期待を裏切られたという感想です。レンズ補正以外で機能面に問題はないので、中国製サードパーティだからといって、値段で妥協して買うのではなく、写りの良さで選ぶことのできるレンズだと思います。

Viltrox 85mm F1.8 を購入してめちゃくちゃ良かったです! Nikon Zマウントで選べるレンズはまだまだ少ないので、これを機に、サードパーティ製レンズが続々と登場するのを期待したいです。